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2017.09.13

「再会」(二次創作みたいなもの)

 出張でこの街に来て半年。

 休日の午前中、雑踏を歩いていた私は、
通りの向こう側にとてつもなく懐かしい人物を見かけた。
ノンボタンのスーツを着こなす銀髪の長身、碧眼、
ちょっと鷲鼻気味のあの人は…

(いや、まさかそんな。でも、あれは確かに…)

 心では疑念を持ちつつ、しかし身体は勝手に動いていた。
他の交通に注意しつつ、素早く道を横断すると、
私はその人物に近づいていく。

「おはようございます。これからご出勤ですか?」

[彼]はおや?といぶかしげな顔をして、

「おはよう。どこかでお会いしましたかな?」

ややトーンの高い、それでいて深みのある声。
昔、よく聞いていたそのままだ。

「ええ、いや、あの、小さかったころ、貴方にはずいぶんと憧れたものでした。」

 私はしどろもどろだ。
考えてみれば、かつての所属や、その後の職業など、
私は[彼]のことをよく知っているが、
[彼]は私のことなどを知るはずもないことを思い出したのだ。

しかし[彼]は、ああ、と納得した顏で深くうなずくと握手を求めてきた。
そして、

「今日は暇かね? よければ、“会社”のほうにでも案内しよう。」

そういうと、そのまま歩きだす。私はあわてて後を追った。

 半ブロックほど歩くと、町並みは古び、まるで前世紀のようだ。
そんな中で[彼]を見失った私は右往左往してしまう。
だが、いつのまにか流麗かつメタリックなスペシャリティ・カーが横付けし、
ガルウイングのドアが開いた。

「どうした? 乗りたまえ。」

[彼]が運転席から手招きしている。
一瞬の躊躇の後、シートに身体を預けると、滑るように車は発進する。

 口元にわずかな微笑を浮かべながら、
この車特有のユニークな形をしたハンドルを操る[彼]に、
私は会話も忘れて見つめることしかできなかった。

 “会社”が見えてきた。かつて何度も見ていた、おなじみの景色だ。
広大な敷地の一角、ひときわ大きなオフィス棟の車寄せに乗り入れる。
降りる彼に続いて中へ。[彼]の登場にタイプを打っていた女性秘書が顔を上げる。

「おはようございます---さん。…そちらの方は?」

「おはよう。ミス---。こちらはお客さんだ。一種の見学者というところかな。」

秘書は微笑んで言った。

「そうですか、ごゆっくり。」

 奥にある執務室に入ると、[彼]は私にとっては見慣れた、
しかしあくまで秘密のあの手順を行なったのだった。

         * * *

 扉が開くと、まったく唐突に近未来的な空間が出現した。
周囲からは各種電子機器が発する騒音が低く聞こえており、
ボディスーツ様の制服を来た男女がきびきびと歩き回っている。

 [彼]の説明を受けながらついていくと、
精悍な顔つきの人物が[彼]に話しかけてくる。
私にはわからない会話がひとしきり続いた後、
その人物はこちらに微笑を向けてきた。

「はじめまして。僕は… いや、キミは僕のことをよく知っているんだったね。
 今日は楽しんでいってくれたまえ。」

 もみあげが印象的なその人物は、軽く手を振りながら去っていった。

 いちばん奥には[彼]の部屋があった。
もうひとつのオフィスだ。すでに部屋には先客がいた。
軽く割れたあご、彼よりやや年上で、苦労人らしい顔つきだが、
目の奥には柔和な光をたたえている。

仕事上の現状報告などが終わった後、
その人物はこちらを見やりつつ[彼]に聞いた。

「彼が、その、見学者か?」

「そうだ。どうも、我々のことを我々以上によく知っているようだぞ?」

[彼]がイタズラっぽくウインクしながら答える。

「まさか。…ふむ。まぁいい。このところ静かなものだし、
 たまにはこういうお客さんもいいだろう。
 君、疑問があったらなんでも聞いてくれたまえ。私はあちらにいる。」


 その後も私は施設を堪能した。 
遠い勤務地にいるはずの要員もここに戻ってきており、
あこがれだった女性とも話をすることができた。

 ひとしきり施設を見て回った後、
[彼]のオフィスに戻って飲み物で喉を潤しながらくつろぐ私。
だが、そろそろこの夢のような時間にも終わりが近づいているようだ。
私は、意を決して口にしてみた。

「今日は、本当にありがとうございました。
 長年の夢がかなってとても幸せです。しかし…なんというか、皆さんは… 」

やはり口ごもってしまう私に、彼は遮るように口を開く。

「確か君の国では、我々のようなものが定期的に戻ってきて、
 それを迎えるという風習があったんじゃないかな?
 そんなものだと思ってくれればいいさ。」

そして立ち上がり、改めて握手を求めてくる[彼]。

「ありがとう。今日は会えてうれしかった。
  …私たちのことを、忘れないでいてくれて…。」

不意に[彼]と、周囲の景色が薄れていった。

              * * *

 気が付くと私は、郊外にある大きな施設の前にたった一人でたたずんでいた。

そうか、今日はちょうど…

帰ったら、久々にDVDでも引っ張りだそう、そう思った。

(完)

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